ふたなりの話

圭勇 R18
ゆうとくんがふたなりとかいう些かアレな話です。長い。
勇人が医者の息子と判明する前に書いてたから褒めて。

 

 

 だいたいセックスをするときは部屋は薄暗かったし、勇人と違ってオレはセックスの最中に局部をまじまじと見るのは失礼だと思っているし、雰囲気も壊れるから好きじゃなかった。
 だから、今日の今日までその事実を知らずにいたんだ。
「今日生理だから無理だ」
「は?」
 以前は黒かったけど勇人とセックスするようになってから純白に変えたシーツに勇人を押し倒しながら、柔らかい間接照明に照らされた温かな頬を撫でていたオレは突然の宣言に思わず素っ頓狂な声を出して固まった。優しいパーフェクトな恋人を演じたいのに勇人はそんなオレの願望を簡単に壊してくれる。
「あのな、ベッドの中でいう冗談にしてはセンスがないぞ」
「孕むって言うと興奮するくせに何言ってんだ」
「それは雄の本能だろ」
 のしかかったオレを押し退けて横に逃げようとするから、腕で囲って閉じ込めた。面倒くさそうな顔がオレを見上げる。
「いいけど、バスタオル引くかなんかしとかねーと汚れるぞ」
「その冗談いつまで続くんだよ」
 やりたくないならやりたくないと言えばいいのに、セックス自体はイヤじゃないみたいな態度にムッとして乱暴になってしまう。なんでそういう煽り方をしてくるのかよくわからないが、毎度見事に煽られてしまうのだからオレも大概だ。ひっくり返して雑に尻だけ出させた如何にもヤるための格好に興奮しながら両手で触り心地のいい肉を撫でていると、太ももにツウと伝うものがあった。
「えっ」
 鮮血のそれはオレの背筋を氷の刃で撫でて興奮で上った血を一気に下げてくれた。最中に局部を凝視するのは失礼だ、とかナントカ、そういうのは一瞬にして忘却の彼方へ飛んでいき、勇人の股間をぐっと開いてのぞき込む。肛門の向こう側、精液を溜めた二つの玉のこっち側に、真っ赤な亀裂が走っていた。
「な、なんだこれ……」
 勇人が身じろいでオレをみおろす。なにって、と聞こえてから「vagina?」と疑問詞の答えが返ってきた。
「えっ、なに、どういうこと、えっ」
 血の滲む亀裂に些か臆して動揺するオレに勇人は淡々と教えてくれた。
 父親が特殊な精子持ちで、有名な生物学者も所属していたとかいうイギリスの遺伝子研究機関で生まれたこと。両性の染色体をもって受精したけれど男性性の方が強く出て、精神的にも男性性が勝っていること。だから別に男が好きなわけじゃないから、と喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないようなことを説明された。
「じゃあこれ、正真正銘、女の子のアレなんだ……」
 ピッタリと閉じた薄い肉を親指で押さえるとぱくっと開いて真っ赤な肉が覗いた。うわっ。ちょっと引いていたオレは衝撃的な絵面に目眩を起こす。また一筋、亀裂が赤い血を零した。
「すごい……触ってもいい?」
「もう触ってんだろ」
 指先でそっとなぞると指先が赤く濡れた。うわあ。感嘆詞を飲み込みながら、その小さな肉の隙間に指を差し入れた。
「っ…!」
「大丈夫?痛い?」
 はねた背を摩ってやりながら、肉の上をゆっくり撫ぜた。それが処女膜だったことをオレはあとから勇人に教えてもらった。
 アナルよりも前にある穴は後ろからだと弄りにくくて、うつ伏せの身体をひっくり返すといやに蕩けた勇人の顔がオレを見上げた。
「……なんかいつもよりえっちな顔してる」
 言われたことに気付いた勇人はフッと理性を取り戻したような仕草でオレを睨むと、またすぐ力を抜いてシーツに沈んだ。
「そっち触るならゴムしとけ」
 言われた言葉に頷いてゴムをひとつ開ける。少し考えてから、もう一つ開けて自分のペニスにも被せておいた。
「……すげぇムラムラする」
 諦めたような顔で勇人が言うから不思議に思っていると、生理の時期はヤりたくなるのに色々とめんどくさいから我慢してたことを教えられた。
「めちゃくちゃ興奮してるんだ?」
 頷きながら、なんで?と聞くオレに勇人は分からないと首を振って答えた。専門機関でちゃんと調べてもらっていた時期もあったらしいが、結局珍しい変異生態だから調べようが何しようが自分の体からしか分かることが無いらしい。10のときに身体をいじくり回されるのが嫌で検査から逃げ出したのだと告白する勇人に可哀想という気持ちと、その幼いオレの恋人に医療とはいえ触れた奴らにふつふつと怒りが込み上げた。
 そんな話をしながら処女膜をやわやわと撫で擦っていたら、突然指がつぷりと奥に沈んだ。勇人もびっくりしてたけど、オレもびっくりした。
「っ……てェ……」
「大丈夫か?いたい?抜くか?」
「いい…………いてぇ、けど、いい。無茶すんなよ。」
 眉間に小さくシワを寄せた勇人がまつげを震わせながらそう言うから、めちゃくちゃ優しく甘やかして大事にしてあげたいという気持ちが膨れ上がる。頬にキスを何度か落とすと「そういうのはいい」と顔を押し返されてしまった。なんだとこの。
 差し込んだ指を努めて緩やかに奥に差し込こむ。アナルよりもずっと狭い中は肉のひだがギュウギュウ絡みついてきて股間に熱が溜まった。奥までたどり着くと、指先にまた肉の壁を感じた。
「あっ」
「ここで終わり?」
 指先に触れた場所を検分したくて動かしてみるけれど、ギュウギュウに狭いナカじゃあ満足に動かせない。引っ掻くみたいに指先で擦ると、勇人が気持ちよさそうに唇を噛んだ。
「ンッ、ッ、うー…、ンッ…」
「後ろもそうだけど、奥、好きだよな」
 薄ら目を開けた勇人がこちらを見上げてコクンと頷いた。そこ、とビブラートの掛かった声がする。
「子宮」
「は、……」
 言われた意味が一瞬わからなくてポカンとしたオレに勇人はニヤリと意地の悪い顔を寄越した。
「そこ、”赤ちゃんできちゃう”ンだよ」
「っ!」
 ぶわ、と頭が沸騰して笑いが込み上げてきた。そのオレの顔を、悪い顔してると笑った勇人が腰を揺らしてオレの指を奥に押し付けた。
「は、あ……―――きもちいい………」
 蕩けたことを言う勇人のナカからオレは慌てて指を引き抜いてゴムを外す。
「ってぇ!……おい、無茶すんなっ、て……?!」
 がば、を突然足を開かされた勇人は言葉を詰まらせてオレを見上げた。引き寄せて晒したアナルにローションをドバっとぶちまいて新しく出したゴムをつけて性急に中を探った。
「っ……、ンだよ、そっちかよ…」
 状況を理解した勇人が協力し始めてくれて、指が奥まで埋まる。でも早くチンコをぶち込みたくて、急いで指を増やした。
「っ、……無茶してんじゃねー、ぞ、王子様……」
 二本の指でぐるりと掻き回せるようになると、乱暴に弄られて空気を含んだローションがブビ、と下品な音を立てた。興奮で蕩けていた勇人の顔がムッとしたのが可愛かった。充分ほぐれたそこから指を引き抜いて、今度は三本にしたのを押し込む。少しの抵抗のあと括約筋は緩んでオレの指をうまそうに食んだ。ローションまみれの尻の上を触ると真っ赤な血が糸を引きながら勇人の腹の方へ流れていった。
「いっつもローションでぐちゃぐちゃにしてたから気付かなかったけど、もしかしてここ、濡れてた?」
 ぬっとりとまとわりつく赤い本気汁を太ももの方に伸ばしながら聞くと勇人は息も絶え絶えに「知らねぇ」と答えた。
「なんで?出てるとか分かんないのか?」
「射精と違って分かんねーよ」
 それにそっちは痛いからあんまり触らないと説明された。痛いんだ。興奮で既に霞がかっていた脳内にまたジンワリと興奮が広がる。痛い場所に指を突っ込ませてくれて、そのうえ気持ちいいとまで言ったくせに。
 よく解れたアナルから指を引き抜いて、両手で足を掴む。最初に装着したゴムはずっと臨戦態勢だったチンコにちゃんとフィットしていた。
「は、あ………」
「いれるよ」
 宣言して押し付けた亀頭はいつも通りじんわり括約筋をくぐりぬけて温かい直腸に迎え入れられた。
「、あーーー……」
 感じいった声が尾を引いてオレの耳を犯す。枕に顔を押し付けた勇人が唇を震わせて真っ赤になっていた。かわいい……。ため息のようにそう思う。
 最初の抵抗だけで勇人の尻はズルズル奥までオレを頬張った。ゴツンと突き当たると、掴んだ足が暴れるようとしたけど押さえ込んでまた奥をつく。
「うあ!あっ、あっ、あっ、ン〜〜〜!」
 イきたそうに身体をねじるのが興奮する。単調に奥を突きながらオレは尋ねた。
「赤ちゃんできちゃう?」
「っ、あ、あ、あぅ、う、ンッ、ンッ、れき、る……あかちゃん、できるぅ……っ」
 平常時でもたまにあるけど、勇人はなにかに集中してると言語器官が疎かになる。日本語がよく分からなかった頃の聴き流しスキルの賜物らしいが、返事も適当だし喋れなくなってただオウム返しするだけとか、仕事中だとめちゃくちゃ困るが、こういうときは堪らなくその性質に感謝して興奮する。
 奥をガン突きしながら何度かきもちいいと赤ちゃんできるを言わせたあと、満足してオレはまた新しいゴム手に取った。動きが疎かになったのが不満なのか、勇人はもぞもぞ動いて何とか中を擦ろうとする。ほっとくと押し倒されて乗っかられる危険が出てきたので慌てて勇人にのしかかって唇にキスをした。キスが嫌いじゃない勇人はぺちゃぺちゃ一生懸命唇を噛んでは舐めてと嗜好を凝らしたキスでオレを気持ち良くさせてくれる。
 準備ができて一旦身を引いたオレの顔を物足りなそうに追っかけたあと、舌打ちをして「はやく」と勇人の足がオレの腰をホールドした。その拍子に奥を突かれてくたんと力が抜けた足が、地団駄をふむ子供みたいに力なくオレの身体を蹴る。
「ちゃんと気持ちよくしてやるから」
 そう言って赤が広がった元凶の亀裂にまた指を押し込んだ。処女膜を抜けるときはやっぱり痛いようで、いた、と小さく叫んだあと期待するような目線を寄越してきた。何をするかもう分かってるんだろう。
 女の子よりもスペースのない小さな洞窟はすぐに行き詰まる。指の腹でグッと押すと指だけじゃなくて尻に突っ込んだペニスまで締め付けられた。
「〜〜〜〜〜〜ッ」
 お尻でイク時みたいに息を詰めて身体を震わせている。気持ち良さそうだ。そのまま腰を持ち上げて、ほぼ上から勇人の子宮を固くなったチンコで押し潰した。
「あっ!ッ!は、あっ、あっ、や、やめっ…!」
「やなの?」
 ビクビクと痙攣するナカは、指だとより鮮明に分かった。奥をもっと刺激してあげたいけど、俺の指ではここが限界だ。子宮口が物欲しそうにひくつくのを指先で感じながら、射精を堪えるのが大変だった。もっと見てたい。もっと感じていたい。二穴から子宮いじくられて孕んじゃうと泣き叫ぶ勇人なんてしばらく夜のおかずには困らないほどのエロさだった。
「ンあっ、あっ、あーっ……ッ、うんっ、んっ、んっ」
「すご…、っきもちい………ゆうと………、はやくイって……っ」
 ゴンゴン奥を突いてるからオレのチンコもそんなにはもたない。気持ちよくて今すぐ射精したいけど、どうしても子宮気持ちいいってメスイキする勇人が見たくて必死に我慢した。めちゃくちゃ気持ちよさそうに身体をくねらせているのに、勇人はなかなかイく気配を見せない。時折イタッと声を上げるから気が散っているのかもしれない。でもいつもよりずっと官能的に喘ぐ声も相まって結局オレのほうが先に音をあげてしまった。
「は、あっ、ごめ………ゆぅと………出るっ………ぅ」
「んっ!あーーーーーっ、あっ、すっげ、……っ、」
 ビクビクと震えて溜め込んだものを一気に放出する気持ち良さに浸る。尻の中でゴムに精液を撒き散らすオレに、無邪気に「でてる」と報告して笑うのはちょっと幼さがあって好きだ。最高に気持ちよくイッたあとのもの寂しさにキスをすると、逆に濃厚で優しいキスを施し返された。耳の後ろを擽る指に変な声が漏れる。
「ごめん、勇人いってないのに……」
「別にいーだろ、きもちよかったし」
 体の力を抜いて満足そうにしているのは嘘ではなさそうだ。オレは突っ込んだことしかないし、射精しかしたことないから、それで満足できる気持ちがあまり分からない。とにかくことを終わらせるために、まず繊細な膣から指を引き抜こうと思った。
「……っ…」
「すごい、絡みついてくる…」
 指を動かすと隙間からねちゃりと赤い汁が吹き出した。狭いなかを指先で感じながら出てくると、浅い所で何かに引っかかった。
「…っ!」
「あ、ごめん、痛かった?」
 丁寧に抜こうと思ってもそれが邪魔してどうしても触らずには抜けない。仕方がないから我慢してくれと頼んで極々ゆっくりそこを撫ぜた。
「〜〜〜っあっ!ま、っ、ンッ」
 少し声の高い喘ぎ声に尻に突っ込んだままのチンコがまた固くなってしまった。痛がってる相手を見て勃起するなんて性癖は無かったはずなのに、と申し訳なくなりながらゴメンと頭を撫でる。下ろしたはずの勇人の足がピクンと空を蹴った。
「……、ちげぇ、それ、前立腺だ」
「えっ」
 初めてエッチしたときに見つけられなくてしこたま落ち込んだウワサのアレの名称が突然でてきてオレは面食らった。セックスはお互いが気持ちよくなってこそだと主張するオレに、人それぞれだから諦めろと勇人が諭したのは記憶に遠くない。奥で充分気持ちいいと言うから最近は完全に忘れていた男でも気持ちよくなれるらしい性感帯を、オレはやっと発見した。なるほど、間に女性器があるから刺激できなかったわけだな!って言うかなんであの時説明してくれなかったんだ。めんどくさがらないでくれ。何回セックスしたと思ってるんだよ!
「じゃあこれ痛いんじゃなくて気持ちいいんだ」
「ンッ」
 引っかかるほど腫れたそれを遠慮なく指で押し上げると、勇人の勃起していたチンコが跳ねて精液を漏らした。反射で口を覆った勇人がこちらを睨む。すごいかわいい。その快感は何となく理解できるから余計に興奮した。
「勇人、おんなのこのほうと、おとこのこのほう、どっちがいい?」
 またおっきくしてしまったのを咎められなかったので、そのまま奥を緩やかに突くと、勇人の手がオレを止めようと伸ばされて、でも届かなくてシーツに落ちる。返事は期待してなかった。返事もできないほど良がっている姿を見たかっただけだ。指先がシーツを何度か引っ掻いて、やがて勇人は手で枕を顔に押し付けてしまった。
「んーっ、んっ、んっ、」
 鼻にかかった幼い喘ぎ声が枕の隙間から漏れて、勇人が噛んだ布地が色を変える。狙いを外さないよう奥を突き上げる度に声が上がって、チンチンの裏っかわを押し上げる度に精液が押し出された。これトコロテンかな。違うのかな。にやにやと頬が緩むのが止まらない。勇人は身体をくねらせるから、同じところを突くのはとても大変だった。
 息を荒らげて胸を喘がせる姿に、そう言えば乳首もかわいがってあげたいなと思い出すが、今日は女の子のところと男の子のところをかわいがるので忙しい。胸、自分でいじって、とお願いしたら至極素直にパジャマがわりのシャツに手を潜り込ませた。
「ンッ、んー…、…ふ、ぅっ…」
 もぞもぞとシャツ越しに手が動いて、何をしているのか良く分からない。しばらく勇人がシャツの中で自分の乳首をいじってるのを見ていたけど、イライラとゾワゾワの中間みたいな衝動が湧いてきて結局シャツを捲って見せてくれと懇願してしまった。
「ンッ……ふ……」
 下半身の気持ち良さにまたぼんやりし出している勇人は素直にシャツをたくしあげて玉のような汗が浮いた胸元を見せてくれる。男の無骨な手が、しっかりと筋肉のついた胸板を柔らかく押し上げてその中心で色づく乳首をオレに見せつけた。あまりにも美味そうなそれにゴクリを息を呑む。
「あっ、ん、うー……」
 勇人の体はどこからどう見ても男だけど、オレに比べて肉の付き方が柔らかい。質のいい筋肉はしなやかで柔らかいと言うから勇人の身体もそういった類のものだと思っていたけれど、チンコで子宮を叩いている今はどこか女の子の柔らかさを思い出させた。赤く腫れた乳首を指先で引っ掻きながら勇人が小さく「いく……」と呟いた。わっと頭の中が取っ散らかる。
「いくの?」
「ん、…いく、いく…」
 胸を反らせて何度もイクと訴える勇人に急激に射精感が貯まる。上手にイけるように丁寧に子宮を突いて、チンコの裏を押しつぶしてやった。
「あっ、あっ、いく、いく、ーーーーーっ!」
 痛くないんだろうかと思うくらい乳首を引っぱりながら勇人がイった。緊張したチンコからだらだら精液を漏らしながら、痙攣する内壁がドロリと体液を吐き出した。尻はいつも通りオレの性器を噛み締めて出させようと震える。オレも思いっきり射精したくなって、膣から指を引き抜くと両足を掴んでイキ狂ってる勇人の中を何も考えずに突き上げた。
「ひっ!?あっ!?うあ!や!あっ!まっ!ン〜〜〜〜〜〜」
 一度そっち側に行ってしまうとなかなか降りてこないのを知っているから、本当はいつもこうやってイかせてから自由に動いて一緒にエクスタシーを迎えたい。そう毎回上手くいくわけじゃないから、そうなれた時の心と体の充足度は桁外れだ。好き勝手動いてもめちゃくちゃ良がってくれるのは、セックスで射精するのが好きというよりは抱き合うのが好きなオレにとって、セックスという行為の醍醐味みたいなものだった。
「っは、あっ!はっ、はっ、ゆ、とっ……出すよ…っ!」
 ゴン、と奥に押し付けて2度目の精液を吐き出した。勇人の足がばたついて、オレの背中を何度か蹴る。暴れるメスを無理矢理征服したかのような凶暴な本能が満たされて、やけに優しくしたい気持ちになった。
「ゆうと……」
 ちゅっ、ちゅっと何度か唇を押し付けて軽く吸う。目尻に流れていった涙のあとや、唇から溢れ出した唾液のあとなんかを舌で舐めとって、鼻の頭を押し付けた。まだ小さく喘ぎながら痙攣している勇人を見下ろす。大きく息をついている胸は上下していて、乳首をいじらせた両手はそのまま胸に置かれていた。吐き出した精液と揺さぶられて飛び散った血液が点々と腹に伸びている。あまりの惨状に可哀想にとすら思った。チンコを引き抜いた穴は閉じることを忘れたようにぽっかり開いていて、ぶちこんだローションが中出ししたみたいにトロトロ零れ出す。ゴムを外すとオレの精液2回分を見た勇人が「すげぇ出したな」と茶々を入れてきた。
「孕ませたくてね」
 肩を竦めてそう言うと勇人はフンと楽しそうに鼻で笑った。それをゴミ箱に 捨てながら、ぐちゃぐちゃになったシーツをさてどうしようと思案した。
「だからバスタオルかなんかひけっつったろ」
 そう言う勇人にとりあえずシャワーを浴びてくることを勧めて、その間に片付けることにした。シーツを剥がして、これはもうダメかもしれないと思いながら洗濯機に放り込む。浸け置き洗いどれだったかなと思いながらボタンを何個か押してたらピーピー唸ったあと黙り込んだので面倒になって水だけ入れて洗剤を振りかけておいた。明日何とかしよう。
 シーツを無くした敷布団にとりあえずバスタオルを何枚かひいて寝ることにした。お湯を浴びてきた勇人がスッキリした顔で何やら丸めたものをゴミ箱に放り込んだ。
「なんだそれ」
「ナプキン」
 思わずゴミ箱を二度見した俺を勇人は無表情のまま「何見てんだよ」と咎めた。
「いやっ!別に何も?!」
「声、裏返ってんぞ」
 今度は少し面白そうな声で言うと、裸足でぺたぺたフローリングを鳴らして布団に潜り込んだ。無言でぱたぱた隣を叩かれる。はいはい、いま行きますよ。
 隣に寝っ転がったオレを勇人はぱちぱちしばらく眺めたあと、ぼんやり瞼を下ろして擦り寄ってきた。かわいいな。種付けしたメスを思う犬かなんかのような気持ちになりながらそれを見てると、勇人が小さな声で「すげぇ良かった」とか言い出した。ぶわ、と首が熱くなる。なに言い出すんだ。なに言い出すんだ!
「初めて使った」
 うつらうつらしながら勇人がそんなことを言う。
「なんでもっと早く教えてくれなかったの」
 聞こえなくてもいいと思いながらトーンを落として尋ねると、勇人は眠そうな目を少しだけ開けてオレを見た。
「俺じゃなくなる気がしてた」
 ぼんやりとした目の奥にある強い意志がそう応える。それから眼力がふっと緩んで「お前でよかった」と言った。表情筋は笑顔を形作ってなかったけれど、オレには勇人が笑ってくれたような気がした。
「オレにとって勇人は勇人だよ」
 それの答えが正しいかどうかなんて分からなかったけど、勇人は知ってると呟いたあと、もう寝ろと囁いてオレの頭を抱きしめた。オレが使ってるボディソープの匂いがして、それから勇人の匂いがして、好きと愛おしいの中で俺は眠りに落ちた。